頬に触る柔毛のような雲を見たら、私の白い猫が浮んできた。
そう、記憶の薄い光の中に、猫は前足を揃えて座っている。
私は傍に行き、猫のからだに顔を寄せる。名を呼んで「元気?」と訊く。
猫は返事もせずに立ち上がると、伸びをしながら向こうへ歩き出す。
そのときちょっとだけ、しゃがんだ私の膝の辺を、”ぐん”と押す。
猫の柔毛がさらさらと私の顔を過ぎる。
さらさら さらさら
さらさら さらさら
と、
過ぎ去って行く。
柔毛の雲は、メビウスの雲みたいだ。
階段の踊り場に出たら、北の空に月が出ていた。
月を撮って画像を開けたら、左の棟の窓に西の夕空が映っていた。
なんだか、”ハッ” とした。
空の隙間に立っているように、眩めいた。